未来へつむぐ、サステナブル建築の話

デザイン・アート

(画像はイメージです。)

皆さんは、「環境」と「建築」という言葉を聞いて、どのようなつながりをイメージされるでしょうか? もしかすると、あまり関係がないように思えるかもしれません。しかし、実は私たちの暮らしの基盤である「建物」は、地球環境と切っても切り離せない、非常に深い関係を持っています。
考えてみてください。一本の木が家の一部になるまでには、たくさんのエネルギーと人の手が加わります。そして、家が建った後も、私たちはそこで電気やガスを使い、冷暖房や照明をつけます。これらの活動は、知らず知らずのうちに地球に負担をかけている場合があります。世界のエネルギー消費量のかなりの部分が、建物の建設や利用に関連しているとも言われています。
だからこそ今、「持続可能な建築」、つまり、未来の世代も安心して暮らせるように、環境に配慮した建築の考え方が世界中で注目されています。これは、単に「エコな家」ということだけではありません。使うエネルギーを減らすこと、再生可能な資源を選ぶこと、そして何よりも、そこで暮らす人々が心身ともに健康で快適に過ごせる空間を作ること、これら全てを含んだ広い考え方なのです。
この記事では、持続可能な建築とは具体的にどのようなものなのか、そして、それがなぜ私たちの未来にとって大切なのかをご説明していきます。私たちの住まいが、どのように地球と共存していけるのか、そして、私たち一人ひとりが日々の暮らしの中で、どのような選択ができるのか。そんなヒントを考えていきたいと思います。
  1. 建築が環境に与える影響を知る

    私たちが暮らす建物は、その一生涯を通じて地球環境に大きな影響を与えています。
    例えば、建物を建てるためには、木材やコンクリート、鉄などの材料が必要ですが、これらの材料を作る過程で多くのエネルギーが使われ、二酸化炭素が発生します。
    建物が完成した後も、冷暖房や照明、給湯などで大量のエネルギーを消費します。
    そして、建物の寿命が来て壊される時には、たくさんのゴミが出ます。
    このように、建築は地球温暖化や資源の枯渇といった環境問題に深く関わっているため、その影響をできるだけ小さくすることが、これからの建築には求められています。

    私たちの暮らしに欠かせない「建物」は、毎日を過ごす大切な場所です。家や学校、オフィス、お店など、私たちは一日のほとんどを建物の中で過ごしています。でも、これらの建物が、実は地球の環境にとても大きな影響を与えている、ということはあまり意識されないかもしれません。建物は、建てる時から、使っている間、そして最終的に役目を終える時まで、様々な形で環境に負荷をかけています。

    建物の「一生」と環境負荷
    建物が生まれてから消えるまでの流れを「ライフサイクル」と呼びます。このライフサイクルの各段階で、環境に様々な影響が出てきます。まずは、建物を建てるために必要な材料を作る段階。次に、実際に建物を組み立てる建設の段階。そして、完成した建物に人が住んだり使ったりする運用段階。最後に、古くなった建物を壊す解体・廃棄の段階です。それぞれの段階で、どのような影響があるのかを見ていきましょう。
    材料を作る時にかかる負担
    建物を作るには、本当にたくさんの材料が必要です。木材、コンクリート、鉄、ガラス、プラスチック、石膏ボードなど、挙げればきりがありません。これらの材料は、地球にある資源から作られます。

    • 大量のエネルギー消費
      材料を作る工場では、機械を動かしたり、材料を加工したりするために大量のエネルギーを使います。例えば、セメントや鉄を作る時には、非常に高い温度が必要で、そのために多くの燃料を燃やします。この燃料を燃やす時に出る二酸化炭素は、地球温暖化の大きな原因の一つです。また、材料を工場から建設現場まで運ぶトラックや船も、燃料を使って二酸化炭素を出しています。
    • 地球の資源を使うこと
      建物に使われる材料の多くは、一度使ったら簡単には元の資源に戻せないものです。例えば、砂や砂利はコンクリートの原料になりますが、限りある資源です。木材は再生可能な資源ですが、適切に管理されない森林伐採は、森林の減少や生態系の破壊につながります。鉄鉱石やアルミなどの鉱物資源も、地球に埋蔵されている量には限りがあります。たくさんの建物を建てることは、地球から大量の資源を取り出すことにつながるのです。
    建設現場での影響
    材料が建設現場に届いたら、いよいよ建物を組み立てる作業が始まります。この建設の段階でも、いくつかの環境への影響があります。

    • 機械を動かすエネルギー
      建設現場では、クレーンで重い材料を吊り上げたり、ドリルで地面を掘ったり、様々な機械が使われます。これらの機械は、多くの場合、ガソリンや軽油といった化石燃料を使って動いています。機械を使うたびに燃料が燃やされ、二酸化炭素が大気中に排出されます。また、建設作業中の騒音や振動は、周囲の生活環境に影響を与えることもあります。
    • 発生する建設ごみ
      建物を建てる際には、材料の切れ端や梱包材、作業で不要になったものなど、どうしても「建設副産物」と呼ばれるゴミが出てしまいます。昔はこれらのゴミの多くが埋め立てられていましたが、最近はリサイクルが進んでいます。しかし、分別や処理にはエネルギーが必要ですし、全てのゴミをリサイクルできるわけではありません。建設時に出るゴミの量を減らす努力も、環境負荷を減らす上で大切になります。
    建物を使っている間の大きな消費
    建物が完成して、人が住んだり、仕事に使われたりする「運用段階」は、建物のライフサイクルの中で最も長く、そして環境への影響が最も大きいと言われています。

    • 冷暖房と照明のエネルギー
      建物の中で使われるエネルギーの中で、最も大きな割合を占めるのが冷暖房です。夏はエアコンで部屋を冷やし、冬はストーブや暖房で温めます。外の温度と室内の温度差が大きいほど、たくさんのエネルギーが必要です。照明も、昼間でも電気をつける場所や、夜遅くまで点灯している場所では、かなりのエネルギーを使います。これらのエネルギーの多くは、発電所で化石燃料を燃やして作られています。
    • 毎日使う水のこと
      建物の中では、お風呂やシャワー、トイレ、キッチンなどで毎日たくさんの水を使います。水道から出てくる水は、浄水場でたくさんのエネルギーを使ってきれいにされ、長い距離を運ばれてきます。使った後の排水も、下水処理場で再びエネルギーを使ってきれいにされます。建物の大きさや用途によっては、水の消費量も環境に与える影響の一つとなります。
    • 暮らしから出るゴミ
      建物で生活したり活動したりする中で、私たちはたくさんのゴミを出します。家庭から出る生活ゴミだけでなく、オフィスやお店から出る事業系ゴミもあります。これらのゴミの多くは、焼却されたり埋め立てられたりしますが、ゴミを燃やす時には有害物質が出る可能性があったり、埋め立て地がいっぱいになったりといった問題があります。ゴミの量を減らし、分別してリサイクルすることも、建物の運用段階における環境対策として重要です。
    • 室内の空気の質
      建物に使われる接着剤や塗料、建材の中には、化学物質を含むものがあります。これらの化学物質が少しずつ空気中に放出されると、室内の空気を汚染し、シックハウス症候群などの健康問題を引き起こす可能性があります。健康に安心して暮らせる建物を作るためには、使う材料に気を配り、しっかりと換気を行うことが大切です。室内の環境は、私たちの体だけでなく、生産性や快適さにも関わってきます。
    建物が終わる時の課題
    建物もいつかは寿命を迎えます。老朽化したり、新しい建物に建て替えられたりする時には、建物を壊す「解体」が行われます。

    • 解体で出る大量のゴミ
      建物を解体する時には、コンクリートの塊、木材、金属、ガラス、タイルなど、非常に大量の廃棄物が出ます。これらの解体によって出るゴミは、建設時に出るゴミと合わせると、日本の産業廃棄物のかなりの割合を占めています。多くの解体ゴミがそのまま埋め立てられると、ゴミの量が増えるだけでなく、有害な物質が土壌や地下水を汚染する可能性もゼロではありません。
    • 再利用やリサイクルの重要性
      解体で出た材料を、そのまま別の建物で使ったり(再利用)、形を変えて新しい製品の材料として使ったり(リサイクル)することが、環境負荷を減らすために重要です。最近では、解体する前に建物から使える材料を取り外したり、コンクリートを細かく砕いて新しいコンクリートの材料にしたりといった取り組みが進んでいます。建物を作る段階から、将来解体する時のことも考えて、リサイクルしやすい材料を選ぶことも大切になってきています。
    生き物への影響と土地の使い方
    建物を建てるためには、まずその土地を使えるようにする必要があります。森を切り開いたり、田畑をつぶしたりして建物を建てることは、そこに住んでいた動物や植物たちの住む場所を奪うことになります。これは「生物多様性」の減少につながります。また、大きな建物が日当たりや風通しを変えてしまい、周囲の環境に影響を与えることもあります。建物を建てる時には、その土地にもともとあった自然や生態系への影響をできるだけ小さく抑える工夫が必要です。
    都市全体で考える環境問題
    建物が集まってできる都市では、建物単体とは異なる環境問題も発生します。例えば、「ヒートアイランド現象」です。建物や道路のコンクリートやアスファルトは熱を吸収しやすく、さらにエアコンなどから出る熱も加わることで、都市の中心部の気温が郊外よりも高くなる現象です。これはエネルギー消費をさらに増やしたり、人々の健康に影響を与えたりします。都市全体の建物の配置や緑地の配置などを考えることも、環境負荷を減らすためには大切です。

    このように、建物は私たちの暮らしを支える一方で、そのライフサイクルのあらゆる段階で地球環境に様々な影響を与えています。これらの影響を理解することが、より環境に優しい、持続可能な建築を考える上での最初のステップとなります。

  2. 省エネルギーを実現する設計と技術

    建物が使うエネルギーを減らすことは、環境への負荷を軽くするために非常に大切です。
    まず、建物の「断熱性」を高めることが基本です。壁や屋根、床に性能の良い断熱材を隙間なく入れることで、外の暑さや寒さが室内に伝わりにくくなります。
    窓も重要なポイントで、二重サッシや特殊なガラスを使うことで、熱の出入りを大きく減らせます。
    また、太陽の光や自然の風を上手に利用する設計も有効です。夏は日差しを遮り、冬は暖かな光を取り込む窓の配置や、風通しの良い間取りは、エアコンなどの使用を減らすことにつながります。

    建物が地球環境に与える大きな影響の一つに、使うエネルギーの量があります。特に冷暖房や照明、給湯などで消費されるエネルギーはかなりの量になります。このエネルギー消費をできるだけ減らすことができれば、発電の際に発生する二酸化炭素を減らすことにつながり、地球温暖化の対策としてとても有効です。省エネルギーな建物は、環境に優しいだけでなく、光熱費を抑えることにもつながるので、お財布にも優しい暮らしが実現できます。では、どのようにすれば建物のエネルギー消費を減らすことができるのでしょうか? それには、設計の工夫と、最新の技術の活用が欠かせません。

    なぜ建物の省エネが大切なのでしょうか?
    私たちが快適に過ごすためには、夏は涼しく、冬は暖かい室内環境が必要です。そのためには、エアコンや暖房機器を使いますが、これらの機器を動かすには電気やガスが必要です。このエネルギーを作る過程で、地球温暖化の原因となる二酸化炭素が多く排出されます。建物のエネルギー消費を抑えることは、この二酸化炭素の排出量を減らすこと、つまり地球温暖化を食い止めるための重要な一歩となるのです。また、限りあるエネルギー資源を守ることにもつながります。
    建物の弱点を知る:熱の逃げ道と入り口
    快適な室温を保とうとしても、建物の中の熱は常に外へ逃げたり、外の暑さ・寒さが中に入ってきたりしています。熱は、主に「壁」「屋根」「床」といった建物を囲む部分や、「窓」「ドア」などの開口部から移動します。冬であれば、暖かい空気がこれらの部分から外へ逃げていきます。夏であれば、外の暑い空気がこれらの部分を通って中へ入ってきます。この熱の移動をいかに少なくするかが、省エネルギーな建物を作る上で最も基本的な考え方となります。
    家全体を魔法瓶にする「断熱」の力
    熱の移動を減らすための最も効果的な方法が「断熱」です。断熱とは、壁や屋根、床などに熱を伝えにくい材料(断熱材)を入れることです。例えるなら、建物をまるごと大きな魔法瓶のような構造にすることです。魔法瓶が中の飲み物の温度を長く保つように、断熱された建物は外の気温の影響を受けにくくなり、一度快適な温度になれば、その温度を長く保つことができるようになります。

    • 壁や屋根に欠かせない断熱材
      建物の表面積の大部分を占める壁や屋根は、熱の出入りが多い部分です。ここに適切な種類の断熱材を隙間なくしっかりと入れることで、冬の暖かさや夏の涼しさが外に逃げるのを大幅に防ぐことができます。断熱材にはグラスウールやロックウール、高性能なプラスチック系の素材など、様々な種類があり、それぞれに特徴があります。建物の構造や地域の気候に合わせて、適切な断熱材を選ぶことが重要です。
    • 足元からの冷えを防ぐ床断熱
      意外と見落とされがちなのが、床下の断熱です。特に冬場、地面からの冷たい空気が床を通して室内に伝わってくると、足元が冷えて非常に寒く感じます。床の下にも壁や屋根と同じように断熱材を入れることで、地面からの冷気を遮断し、床を暖かく保つことができます。これにより、暖房効率が上がり、より快適に過ごせるようになります。
    隙間風を防ぐ「気密」の大切さ
    断熱材で建物を魔法瓶のようにしても、もし建物のどこかに隙間があると、そこから外の冷たい空気や暑い空気が簡単に入ってきてしまいます。これが「隙間風」です。どんなに断熱性能が高くても、隙間が多ければ熱は逃げてしまい、結露の原因になることもあります。そこで重要になるのが「気密」です。気密とは、建物の隙間をできるだけなくし、建物全体を隙間の少ない構造にすることです。

    • 気密が悪いとどうなるの?
      気密が悪いと、意図しない場所から空気が自由に出入りするため、せっかく暖めたり冷やしたりした空気が逃げてしまいます。これにより、冷暖房が効きにくくなり、無駄なエネルギーを消費することになります。また、隙間から壁の中に湿った空気が入り込み、結露を起こしてカビや木材の腐食の原因になる可能性もあります。健康面でも、隙間風は不快感を与えるだけでなく、外部からの花粉やほこり、汚れた空気を室内に招き入れる原因にもなりえます。
    • どうやって気密を高めるの?
      気密を高めるためには、建物を組み立てる際に、部材と部材の接合部などを専用の気密テープやシートを使って丁寧に塞いでいく作業が必要です。特に、窓やドアの周り、コンセントやスイッチの裏側、壁と床、壁と天井の取り合い部分などは隙間ができやすい場所なので、しっかりと気密処理を行うことが求められます。気密性能は専門の測定器を使って測ることができ、建物の品質を示す重要な指標の一つとなっています。
    窓やドアからの熱の出入りを防ぐ工夫
    壁や屋根に比べて、窓やドアといった「開口部」は熱が伝わりやすい場所です。建物の断熱性能を高めても、窓の性能が低いと、そこから多くの熱が逃げたり入ってきたりしてしまい、省エネ効果が半減してしまうこともあります。窓やドアの性能を高めることは、建物の省エネ化において非常に重要なポイントです。

    • 熱を通しやすい窓ガラス
      一般的な一枚のガラス窓は、熱を非常に通しやすい性質があります。冬は室内の暖かさが外に逃げやすく、夏は外の暑さが部屋の中に入ってきやすいのです。窓の面積が大きいほど、この影響は顕著になります。
    • サッシの選び方も重要
      窓ガラスを支える「サッシ」も、熱の伝わりやすさに大きく関わります。アルミ製のサッシは丈夫で軽いですが、熱を伝えやすいため、外部の温度の影響を受けやすいという欠点があります。一方、樹脂製のサッシは熱を伝えにくいため、断熱性能に優れています。最近では、アルミと樹脂を組み合わせた複合サッシなども開発されています。
    • 高性能な窓の組み合わせ
      窓の断熱性能を高めるためには、いくつかの工夫があります。まず、「複層ガラス」です。これは、複数枚のガラスの間に空気や特殊なガスを封入したもので、ガラスとガラスの間の層が断熱材の役割を果たします。さらに、ガラスの表面に特殊な金属膜(Low-E膜)をコーティングすることで、熱の移動をさらに抑えることができます。断熱性能の高い複層ガラスと、熱を伝えにくい樹脂サッシなどを組み合わせることで、窓全体の断熱性能を飛躍的に高めることが可能になります。
    自然の力を借りる「パッシブデザイン」
    最新の技術や高性能な建材を使うだけでなく、建てる土地の気候や地形、太陽の動きや風の流れといった自然の力を上手に利用する設計手法を「パッシブデザイン」と呼びます。これは、機械に頼るのではなく、建物の工夫によって快適な環境を作り出し、エネルギー消費を減らそうという考え方です。

    • 太陽の光を味方につける
      太陽の光は、冬は暖房の助けになりますが、夏は暑さの原因になります。パッシブデザインでは、この太陽の光を季節によって賢く利用します。例えば、夏の高い位置からの日差しは庇(ひさし)や軒を深くすることで遮り、冬の低い位置からの日差しは窓からたっぷりと部屋に取り込むような窓の配置や庇の長さを考えます。これにより、夏は涼しく、冬は暖かく過ごせるようになります。
    • 気持ちいい風を呼び込む換気
      風通しが良い家は、夏でも比較的涼しく過ごせます。パッシブデザインでは、その土地の風向きや、夏に吹く風の通り道を調べて、窓の大きさや位置、建物の配置などを計画します。窓を開けるだけで自然に風が通り抜け、涼しさを感じられるような設計にすることで、エアコンを使う時間を減らすことにつながります。また、暖かい空気は上に昇る性質を利用して、高い位置に窓を設けて熱くなった空気を逃がすといった工夫も行われます。
    最新の省エネ設備を使う
    建物の「器」となる断熱や気密、窓の性能を高めることに加えて、冷暖房や換気、給湯、照明といった「設備」の効率を高めることも、省エネルギーには欠かせません。同じ機能でも、古い機器と最新の機器では、消費するエネルギー量が大きく違うことがよくあります。

    • 冷暖房の上手な選び方
      エアコンや暖房機器は、省エネ性能が高いものを選ぶことが重要です。最新のエアコンには、部屋の状況に合わせて運転を調整する機能などが搭載されており、無駄なエネルギー消費を抑えることができます。床暖房や輻射式冷暖房など、体感温度を高めることで設定温度を控えめにできるシステムも省エネにつながることがあります。
    • 効率の良い換気システム
      気密性の高い建物では、計画的な換気が必要です。空気の通り道をコントロールし、熱を逃がさずに換気を行う「熱交換換気システム」は、冬の暖かさや夏の涼しさを排気する際に回収し、新しい空気と入れ替える際にその熱を利用する仕組みです。これにより、窓を開けて換気するよりも、冷暖房で整えた室温を保ちながら効率的に空気の入れ替えができます。
    • 少ないエネルギーでお湯を沸かす
      お湯を沸かす給湯器も、家庭で使うエネルギーの大きな割合を占めます。ガスや石油を使う従来の給湯器に加えて、最近では電気の力と空気の熱を利用してお湯を作る「エコキュート」や、ガスで発電も同時に行う「エネファーム」といった高効率な給湯システムが普及しています。これらの機器は、少ないエネルギーでお湯を作ることができるため、省エネに大きく貢献します。
    • 明るくて省エネな照明
      照明器具も進化しています。従来の白熱灯や蛍光灯に比べて、LED照明は少ない電力で非常に明るく、寿命も長いという特徴があります。家中の照明をLEDに変えるだけでも、かなりの省エネ効果が期待できます。また、必要な時だけ点灯する人感センサー付きの照明や、太陽の明るさに合わせて自動で調光する照明などを上手に使うことも、無駄なエネルギー消費を抑えることにつながります。
    建物の形や向きも考える
    建物の形や、どの方角に窓を多く配置するかといったことも、エネルギー消費に影響を与えます。例えば、表面積が大きい複雑な形の建物よりも、シンプルな箱型の建物の方が熱が逃げにくい傾向があります。また、太陽の光を最も多く受ける南向きの窓を大きくしたり、日差しの強い西側の窓を小さくしたりといった工夫も、冷暖房の効率に影響します。建物を建てる土地の形や周囲の環境に合わせて、最も効率の良い形や配置を考えることも、省エネルギーな設計の一部です。

    これらの設計と技術を組み合わせることで、建物で使うエネルギーを大幅に減らし、環境に優しく、そして一年中快適に過ごせる住まいや建物を作ることが可能になります。

  3. 再生可能エネルギーを建物で使う

    太陽光や風、地中の熱など、自然から得られるエネルギーを建物で利用することは、地球に優しいエネルギーの使い方です。
    最も身近な例は、屋根に設置する太陽光発電パネルです。これで家庭で使う電気を自分で作り出すことができます。
    太陽の熱を利用してお湯を作るシステムや、地中の安定した温度を利用して効率良く冷暖房を行うジオサーマルシステムなどもあります。
    これらの再生可能エネルギーシステムを導入することで、建物が消費するエネルギーを大幅に減らし、化石燃料への依存を減らすことができるのです。

    建物の省エネルギー性能を高めることはとても大切ですが、それでもやはり、建物を使う上である程度のエネルギーは必要になります。その必要なエネルギーを、石油や石炭といった限りある化石燃料からではなく、太陽の光や熱、風、地中の熱といった、自然の力から作り出そうというのが、「再生可能エネルギーを建物で使う」という考え方です。再生可能エネルギーは、使っても枯渇することがなく、発電や利用の際に地球温暖化の原因となる二酸化炭素をほとんど出さないという大きな特徴があります。建物のエネルギーを再生可能エネルギーでまかなうことは、持続可能な社会を実現するための強力な方法の一つです。

    自然の恵みを暮らしのエネルギーに
    再生可能エネルギーは、文字通り「再生可能な」、つまり繰り返し使うことができる自然の恵みです。太陽は毎日昇りますし、風は吹き、地面の下には常に一定の温度の熱があります。これらの自然の力を利用して、建物の電気や熱をまかなうことができれば、化石燃料に頼る必要が減り、地球への負荷を大きく減らせます。建物で使える再生可能エネルギーには、いくつか種類があります。
    建物で使える主な再生可能エネルギー
    建物で比較的導入しやすい再生可能エネルギーとしては、太陽光発電、太陽熱利用、地中熱利用、そして空気熱利用などがあります。それぞれの特徴や、どのように建物で使われているのかを見ていきましょう。
    太陽の光で電気を作る「太陽光発電」
    皆さんも、住宅の屋根に黒いパネルがたくさん並んでいるのを見たことがあるかもしれません。あれが「太陽光発電システム」です。太陽の光を受けて電気を作るシステムで、建物で使う再生可能エネルギーとしては最も普及が進んでいます。

    • 光を電気に変える仕組み
      太陽光発電パネルは、「太陽電池」と呼ばれる特別な材料で作られています。この太陽電池に太陽の光が当たると、光のエネルギーが直接電気に変換される仕組みです。作られた電気は、パワーコンディショナーという機器を通して、家庭で使える電気(交流)に変換されます。
    • どこにどうやって置くの?
      太陽光パネルは、日当たりの良い屋根に設置されるのが一般的です。建物の形状によっては、南側の壁に設置したり、カーポートの屋根に設置したりすることもあります。パネルの枚数や発電量は、設置場所の日当たり具合や、システムの大きさによって決まります。作った電気は、建物の電気製品に使ったり、余った分は電力会社に売ったりすることもできます。
    • 太陽光発電の良いところ
      太陽光発電の大きなメリットは、自宅で使う電気を自分で作り出せることです。これにより、電力会社から買う電気の量が減り、電気代を節約できます。また、発電時に二酸化炭素を排出しないため、環境に非常に優しい発電方法です。地震などの災害で停電した場合でも、太陽が出ていれば非常用電源として電気を使うことができるシステムもあります。設置の際に工事は必要ですが、一度設置すれば燃料の補給などは必要なく、比較的メンテナンスも容易です。
    • 太陽光発電の注意点
      一方で、太陽光発電には注意点もあります。最も大きな点は、天候によって発電量が大きく左右されることです。雨の日や曇りの日、夜間はほとんど発電できません。また、設置する場所の日当たりや屋根の向き、傾斜なども発電量に影響します。初期の設置費用がある程度かかることも考慮する必要があります。ただし、最近ではシステムの価格も下がり、補助金制度などがある場合もあります。
    太陽の熱をそのまま使う「太陽熱利用」
    太陽の光で電気を作るのが太陽光発電ですが、太陽の「熱」を直接利用するシステムもあります。これは主に、お湯を作ったり、建物を暖めたりするために使われます。

    • 温かいお湯を作る仕組み
      太陽熱利用システムは、「集熱器」と呼ばれる装置で太陽の熱を集め、その熱を使って水を温めます。温められたお湯は「貯湯槽」に蓄えられ、キッチンやお風呂で使うことができます。シンプルな仕組みで、太陽のエネルギーを効率良く熱に変えることができます。
    • 給湯や暖房に利用
      太陽熱利用システムで最も一般的なのは、給湯、つまりお風呂やキッチンで使うお湯を作ることです。太陽の力でお湯の一部、あるいは全てをまかなうことができれば、給湯にかかるエネルギーを大きく減らせます。システムによっては、集めた熱を建物の暖房に利用することも可能です。
    地球の地面の下の熱を利用する「地中熱利用」
    地中熱利用は、地面の温度が一年を通して比較的安定していることを利用するシステムです。地中深くは、夏は外気温よりも涼しく、冬は外気温よりも暖かいという性質があります。

    • 地面の熱はどうやって使うの?
      地中熱利用システムでは、地面の中にパイプのようなものを埋め、「地中熱交換器」として使います。このパイプの中に液体を循環させ、地面の熱を吸収したり放出したりします。この熱を「ヒートポンプ」という機器を通して効率良く集めたり放出したりすることで、冷暖房や給湯に利用します。
    • 冷暖房や給湯に活躍
      地中熱利用システムは、夏は地面の涼しさを使って冷房に、冬は地面の暖かさを使って暖房に利用できます。外気温にあまり左右されず、一年を通して安定した効率で運転できるのが大きなメリットです。また、給湯にも利用できます。設置には地面にパイプを埋める工事が必要で、初期費用は他のシステムに比べて高くなる傾向があります。
    空気の熱を集める「空気熱利用」
    私たちの周りにある空気にも「熱」は含まれています。外が寒い冬でも、空気中には熱エネルギーが存在します。この空気中に含まれる熱を集めて利用するシステムも、再生可能エネルギーの一つと考えられています。

    • ヒートポンプの働き
      空気熱を利用するシステムの中心となるのが「ヒートポンプ」という技術です。ヒートポンプは、少ない電気を使って、空気中から熱を集めて移動させる働きをします。エアコンもヒートポンプの一種です。例えば、冬は外の空気の熱を集めてきて部屋の中に運び、夏は部屋の中の熱を外に出します。
    • エコキュートなどの身近な例
      空気熱を利用した身近な設備としては「エコキュート」があります。これは、空気中の熱を利用してお湯を作る電気給湯器です。電気だけを使って水を温めるよりも、空気の熱も利用するため、少ない電気でお湯を効率良く沸かすことができます。他にも、空気熱を利用した冷暖房システムなども普及が進んでいます。比較的導入しやすいシステムが多いのが特徴です。
    再生可能エネルギーと省エネはセットで考える
    再生可能エネルギーシステムを導入することは素晴らしいことですが、その効果を最大限に引き出すためには、建物の省エネルギー性能をしっかり高めておくことがとても大切です。いくら太陽光パネルで電気を作っても、建物の断熱性能が低くて冷暖房に大量のエネルギーを使ってしまっては、せっかく作った電気もあっという間に消費されてしまいます。先に断熱や気密、窓の性能を高め、使うエネルギーの量そのものを減らす。その上で、足りないエネルギーを再生可能エネルギーでまかなう、という順番で考えるのが理想的です。
    エネルギーを自分で作る家「ZEH」とは
    最近、「ZEH(ゼッチ)」という言葉を聞く機会が増えました。これは「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」の略で、使うエネルギーの量を省エネによって減らし、さらに必要なエネルギーを再生可能エネルギーで作り出すことで、年間の一次エネルギー消費量をおおむねゼロ以下にする住宅のことです。ZEHのような建物は、環境負荷を極めて小さく抑えることができ、エネルギーの自給自足に近い暮らしを実現します。

    再生可能エネルギーを建物で使うことは、地球環境を守るだけでなく、エネルギーを自分で作り出す安心感や、光熱費の削減といったメリットもたくさんあります。これからの建物のスタンダードになっていくと考えられています。

  4. 自然素材や国産材を選ぶ理由

    木や土、石といった自然から生まれた素材は、環境に優しい建材として見直されています。
    特に、適切に管理された森林から生産される木材は、伐採後も植林することで再生が可能ですし、成長過程で二酸化炭素を吸収する効果もあります。
    さらに、外国から運ばれてくる建材に比べて、近くの山で育った国産材を使えば、運ぶ時のエネルギーを減らすことができます。
    自然素材には、室内の湿度を調整したり、体に優しい成分を含んでいたりするものもあり、住む人の健康や快適さにも良い影響を与えると言われています。

    建物に使われる材料には、様々な種類があります。コンクリートや鉄骨のような人工的な材料もあれば、木や土、石といった自然からそのまま、あるいは少し手を加えただけの「自然素材」もあります。最近、環境に優しい建材として、この自然素材、特に日本の森で育った「国産材」に注目が集まっています。なぜ今、これらの素材を選ぶことが大切なのでしょうか? それには、地球にも、私たちの体にも、そして日本の地域社会にとっても、たくさんの理由があります。

    地球からの贈り物を建材に
    自然素材は、文字通り地球が私たちに与えてくれた贈り物を建材として利用するものです。これらの素材は、人工的に作られる建材に比べて、環境への負荷が少ない場合が多く、私たちの暮らしをより豊かにしてくれる力を持っています。
    自然素材が環境にやさしいわけ
    自然素材、特に木材は、その性質上、環境に対して非常に優しい側面を持っています。建物の材料として使うことは、地球のサイクルに沿った暮らし方につながります。

    • 森がくれる再生可能な恵み
      木材は、適切に管理された森林であれば、伐採しても再び木を植え、育てることができます。つまり、再生可能な資源なのです。石油や鉱物のように一度使ったら終わりではなく、世代を超えて利用し続けることができます。日本の国土の約7割は森林です。この森林を大切に育て、そこから生まれる木材を利用することは、持続可能な資源の利用につながります。
    • 作る時に無理をしない素材たち
      コンクリートや鉄を作る時には、非常に高い温度で加工したり、多くのエネルギーを使ったりします。しかし、木材は伐採した後、乾燥させたり加工したりするのにも、比較的少ないエネルギーで済みます。漆喰(しっくい)や土壁なども、自然の材料をベースに作られるため、製造時のエネルギー消費が人工的な材料に比べて少ない傾向があります。建材を作る段階でのエネルギー消費を減らすことは、二酸化炭素の排出を抑えることにつながります。
    • 役目を終えた後も地球に還る
      建物が古くなって解体された時、使われていた材料はゴミになります。人工的な材料の中には、処理が難しかったり、埋め立てるしかなかったりするものもあります。しかし、木材や土、紙といった自然素材は、適切に処理すれば土に還る、あるいは燃やしても有害物質が出にくいものが多いです。生分解性がある素材を選ぶことは、廃棄物の問題解決にもつながります。
    • 二酸化炭素を貯め込んでくれる木
      木は、成長する過程で空気中の二酸化炭素を吸収し、幹の中に炭素として蓄えます。建物に木材として使われている間も、その炭素は固定されたままです。木造の建物が増えることは、空気中の二酸化炭素を建物の中に貯め込むことになり、地球温暖化の対策としても有効です。もちろん、森林が適切に管理され、伐採した分だけ植林されて初めて、この効果は持続します。
    体にも心にも心地よいメリット
    自然素材は、環境だけでなく、そこで暮らす私たちの体や心にも優しい影響を与えてくれます。

    • 空気をきれいに保つ力
      人工的な建材の中には、接着剤などに含まれる化学物質が少しずつ空気中に放出されることがあります。これがシックハウス症候群の原因の一つとなることもあります。自然素材は、化学物質の使用が少ない、あるいは全く使わないで作られるものが多く、室内の空気質をきれいに保つのに役立ちます。特に無垢の木材や漆喰、珪藻土などは、空気を汚す心配が少ないと言われています。
    • 部屋の湿度を調節してくれる
      木材や漆喰、土壁といった吸湿性のある自然素材は、室内の湿度が高くなると湿気を吸い込み、湿度が低くなると湿気を放出するという「調湿効果」を持っています。これにより、ジメジメした梅雨時や乾燥する冬でも、室内の湿度を快適な状態に保つのに役立ちます。湿度が適切に保たれることで、カビやダニの発生を抑え、アレルギー対策にもつながります。
    • 自然な香りと優しい手触り
      木材の香りには、リラックス効果があると言われています。特にヒノキやスギなどの香り成分は、私たちを癒やし、心地よい気分にしてくれます。また、無垢の木材や土壁の質感は、見た目にも温かみがあり、触れた時の感触も優しく、人工的な素材にはない心地よさを感じさせてくれます。五感に訴えかける自然素材の存在は、私たちの暮らしの質を高めてくれます。
    なぜ「国産材」を選ぶのが良いの?
    自然素材の中でも、特に日本の森林で育った国産材を選ぶことには、環境面だけでなく、日本の林業や地域社会にとっても大きな意義があります。

    • 日本の森を元気に保つために
      日本の森林の多くは、かつて建材として使うために人の手で植えられました。これらの木は、適切に間伐(木を間引くこと)や手入れをしないと、光が地面に届かず、森が荒れてしまいます。間伐された木材を使うことで、森林の手入れが進み、健全な森を維持することができます。健全な森は、雨水を貯め込んだり、土砂崩れを防いだり、生き物の住処になったりといった、様々な大切な働き(公益的機能)を担っています。国産材を使うことは、日本の森を守り育てることにつながるのです。
    • 運ぶ時のエネルギーを減らす
      海外から木材を運んでくるには、船やトラックで長い距離を移動させる必要があります。この運搬には多くの燃料が使われ、二酸化炭素が排出されます。一方、近くの山で伐採された国産材を使えば、運搬にかかるエネルギーを大幅に減らすことができます。これは「ウッドマイレージ」という考え方で、食材の「フードマイレージ」と同じように、輸送にかかる環境負荷を示す指標です。地元の木材を使うことは、地球温暖化対策にもつながります。
    • ふるさとの産業を支える
      国産材が使われるようになれば、日本の林業や製材業が活性化します。木を育て、伐採し、加工し、運ぶという一連の仕事は、地域の経済を支える重要な産業です。国産材を使うことは、日本の山村地域に仕事を生み出し、地域の活力を維持することにもつながります。
    • 受け継がれる職人の技
      日本の伝統的な木造建築には、長い歴史の中で培われてきた優れた技術があります。国産材を扱う職人さんたちは、木の性質を知り尽くし、その特性を活かした家づくりを行います。国産材を使うことは、こうした日本の伝統的な技術や文化を受け継ぎ、未来に伝えていくことにもつながります。
    時を経て美しくなる自然素材の魅力
    自然素材、特に木材は、使うほどに味わいが増し、色が変化していきます。新品の時だけでなく、年月を経るごとに深みが増し、独特の風合いが出てきます。これは、工業製品にはない、自然素材ならではの大きな魅力です。傷やシミも、その家で過ごした時間の記憶として、愛着につながることがあります。
    自然素材を取り入れる際の考え方
    自然素材を取り入れることは、環境にも人にも優しい選択肢ですが、素材の特性を理解し、適切に使うことが大切です。例えば、木材は湿気に弱い性質もあるため、通気性を確保するなどの設計上の工夫が必要です。また、信頼できる生産者や供給元から、適切に管理された森林の木材を選ぶことも重要になります。

    自然素材や国産材を選ぶことは、単に建材を選ぶということ以上の意味を持っています。それは、地球の恵みに感謝し、日本の自然を守り育て、そこで暮らす人々の健康と快適さを大切にする、持続可能な未来に向けた選択なのです。

  5. 建物を長く大切に使う考え方

    建物を頻繁に建て替えるのではなく、一度建てた建物をできるだけ長く、大切に使い続けることは、資源の無駄を減らし、環境への負担を軽減することにつながります。
    そのためには、丈夫で長持ちする構造を選ぶことや、将来的に家族構成やライフスタイルが変わっても、間取りなどを変更しやすい柔軟な設計にしておくことが大切です。
    定期的なメンテナンスやリフォームで建物を良い状態に保つことも重要です。
    そして、もし建物の役目を終える時が来ても、使われている材料を再利用したり、リサイクルしたりしやすいように考えておくことも、これからの建築では大切な視点です。

    建物は、一度建てたら終わり、というものではありません。私たちの暮らしを長く支えてくれる大切な存在です。これまでの日本では、建物を比較的短い期間で建て替えることが多かったのですが、最近は、環境のことや資源のことを考えて、建物をできるだけ長く使い続けようという考え方が広まっています。建物を長く大切に使うことは、新しい建物を建てる際に発生する環境への負担を減らすことにつながり、持続可能な社会を目指す上で非常に重要なことなのです。

    壊すのではなく、生かす選択
    古い建物をすぐに壊して新しい建物を建てる、というサイクルは、たくさんの資源を消費し、大量の廃棄物を生み出します。建物に使われている材料は、コンクリートも木材も、もとは地球にあったものです。それらを加工し、運び、組み立てるには多くのエネルギーが必要です。そして、壊す時にもエネルギーを使い、ゴミが出ます。建物を長く使うことは、この一連の流れで発生する環境負荷を減らし、地球の資源を守ることにつながります。
    なぜ建物の長寿命化が大切なのでしょうか?
    建物を長持ちさせることは、資源の無駄を減らし、廃棄物を減らすこと以外にも、様々なメリットがあります。例えば、建て替えの費用がかからなくなることで経済的な負担が減ります。また、長く住み続けることで建物に愛着が生まれ、地域にも根ざした暮らしができます。建物の長寿命化は、環境、経済、社会の全ての面で良い影響をもたらす考え方なのです。
    長く使える建物の「骨組み」を作る
    建物を長持ちさせるためには、建てる時の工夫が最も重要になります。特に、建物の構造体、つまり「骨組み」をしっかり作ることが大切です。人間の体に例えれば、骨や筋肉にあたる部分です。ここが丈夫でなければ、どんなに見た目をきれいにしても、建物全体が長持ちしません。

    • 地震に強く、腐りにくい構造
      日本は地震が多い国ですから、まず地震に強い構造であることは欠かせません。建物の構造がしっかりしていれば、大きな揺れにも耐えられ、長く安心して住むことができます。また、建物の材料が腐ったり、シロアリの被害に遭ったりすることも建物の寿命を縮める大きな原因となります。湿気がこもりにくい設計にしたり、腐りにくい、あるいはシロアリに強い材料を選んだり、薬剤で対策を施したりすることも、骨組みを長持ちさせるためには重要です。
    • 雨や湿気から建物を守る
      建物にとって、雨や湿気は大敵です。雨漏りや壁の中の結露は、建材を腐らせたり、カビを発生させたりして、建物の耐久性を著しく低下させます。屋根や外壁の防水をしっかり行い、雨水が建物の中に侵入しないようにすることはもちろん、建物の中に湿気がこもりにくいように風通しを良くしたり、壁の中の湿気を適切に排出する仕組みを取り入れたりすることも、建物の寿命を延ばすためには非常に重要です。
    丁寧に建てることの重要性
    どんなに素晴らしい設計図があっても、実際に建物を建てる「施工」が丁寧に行われなければ、設計通りの性能は発揮されません。建物の品質は、現場での丁寧な仕事にかかっています。

    • 設計図どおりの確かな施工
      建物を建てる際には、材料の正しい使い方や組み立て方など、細かいルールがたくさんあります。これらのルール通りに正確に施工することが、建物の耐久性を確保するためには不可欠です。経験豊富な職人さんが、一つ一つの工程を丁寧に、確実にこなしていくことが、長く使える建物を作る上で非常に重要になります。
    • 良い建物を作るための品質管理
      建設現場では、設計図通りに工事が進んでいるか、材料は適切に使われているかなどをチェックする品質管理が欠かせません。第三者機関によるチェックなど、様々な段階で品質が確認されることで、安心して住める建物が完成します。丁寧な施工と厳格な品質管理があってこそ、建物の長寿命化が実現するのです。
    建てた後も欠かせない「お手入れ」
    建物を建てた後も、長持ちさせるためには日頃の「お手入れ」が必要です。人間が健康診断を受けたり、怪我をしたら手当てしたりするように、建物も定期的な点検やメンテナンスが必要なのです。

    • 建物の健康診断「定期点検」
      建物の目に見えない部分で劣化が進んでいたり、小さな傷が大きな問題につながったりすることがあります。定期的に専門家による点検を受けることで、建物の「健康状態」を把握し、問題が小さいうちに見つけることができます。これにより、早期に適切な手当てをすることが可能になり、建物の寿命を大きく延ばすことにつながります。
    • 早めの手当てが長持ちの秘訣
      点検で問題が見つかったら、早めに修繕することが大切です。例えば、屋根の小さなひび割れを放置しておくと、そこから雨水が侵入し、建材を腐らせてしまう可能性があります。小さな修繕で済むうちに手当てをすれば、後々大がかりで費用のかかる工事が必要になるのを防ぐことができます。建物の「異変」に早く気づき、適切に対応することが、長持ちの秘訣です。
    • 日々の暮らしの中での簡単な手入れ
      大がかりな点検や修繕だけでなく、日々の暮らしの中でできる簡単なお手入れも建物を長持ちさせることにつながります。例えば、窓を拭いたり、排水口を掃除したり、通気口をきれいにしたりといったことです。こうした小さなお手入れの積み重ねが、建物を良い状態に保ち、劣化のサインに早く気づくことにもつながります。
    変化に合わせて形を変えられる家
    私たちのライフスタイルは、家族構成の変化や趣味、仕事などによって変わっていく可能性があります。建物が、こうした変化に柔軟に対応できる設計になっていれば、その建物に長く住み続けることができます。

    • 家族が増えたり減ったりしても大丈夫
      子供が生まれたり、成長して独立したり、二世帯で住むことになったりと、家族の人数や構成は時間とともに変わります。部屋数を増やしたり減らしたり、間取りを変更したりしやすいような設計になっていれば、その都度建て替えなくても、暮らしの変化に合わせて建物を調整できます。
    • 部屋の使い方を変える自由
      子供部屋として使っていた部屋を趣味の部屋に変えたり、仕事部屋にしたりと、部屋の使い方も変わることがあります。壁の位置を変えやすかったり、将来間仕切り壁を設けやすいような設計になっていれば、リフォームによって建物の用途を柔軟に変更することができます。
    新しく生まれ変わらせる「改修」
    たとえ建物が古くなっても、壊すのではなく、性能を向上させたり、デザインを変えたりして、新たな価値を与え、使い続ける方法があります。これが「改修」と呼ばれるものです。

    • 性能をアップさせるリフォーム
      断熱材を入れたり、窓を高性能なものに変えたりといったリフォームは、建物の省エネルギー性能を向上させ、快適性を高めます。また、キッチンやお風呂などの設備を最新のものに変えることで、使い勝手が良くなり、暮らしが豊かになります。古くなった建物の性能を現代のレベルに引き上げることで、長く快適に住み続けることが可能になります。
    • 建物に新たな価値を与えるリノベーション
      リノベーションは、単なる修繕や設備の交換にとどまらず、建物の骨組みはそのままに、間取りを大きく変えたり、デザインを一新したりして、建物に新たな価値を生み出す改修です。古い建物の持つ良さを活かしながら、現代の暮らしに合った、個性的な空間を作り出すことができます。既存の建物を有効活用することは、環境負荷を減らすことにつながります。
    建物への愛着と未来への資産
    建物を長く大切に使うという考え方は、建物を「消耗品」としてではなく、「資産」として捉える意識につながります。手入れをすればするほど価値が増す、あるいは価値を維持できるものとして建物を見ることで、自然と愛着が生まれてきます。そして、大切に使われてきた建物は、次の世代へと引き継がれていくことができる、未来への資産となるのです。
    建物の情報を記録しておくこと
    建物のメンテナンスやリフォームを適切に行うためには、いつどのような工事をしたか、どのような材料を使ったかといった情報を記録しておくことが非常に役立ちます。建物の「履歴書」のようなものがあれば、将来のメンテナンス計画を立てやすくなったり、売却する際の建物の価値を証明したりすることにもつながります。このような情報が蓄積されていくことで、建物をより長く、より有効に活用することが可能になります。

    建物を長く大切に使うことは、地球環境への配慮だけでなく、経済的なメリットや、豊かな暮らしの実現にもつながる、非常に重要な考え方です。

  6. 住む人の健康と快適さを守る空間

    環境に配慮した建築は、そこで暮らす人々の健康や日々の快適さとも深く結びついています。
    十分な換気を行い、室内の空気をきれいに保つことは、アレルギーやシックハウス症候群の予防につながります。
    結露を防ぐ設計は、カビやダニの発生を抑え、健康的な住環境を作ります。
    また、断熱性能を高めることで、冬暖かく夏涼しい快適な室温を保つことができ、ヒートショックのような健康リスクを減らすことにもなります。
    自然素材の中には、空気をきれいにしたり、リラックス効果があったりするものもあり、心身ともに心地よい空間づくりに役立ちます。

    私たちは、毎日長い時間を建物の中で過ごしています。特に家は、一日の疲れを癒やし、心身を休めるための大切な場所です。ですから、建物が安全で丈夫であることはもちろん大切ですが、それと同じくらい、そこで過ごす人たちの「健康」と「快適さ」を守れる空間であることも非常に重要です。どんなに立派な建物でも、空気が悪かったり、寒すぎたり暑すぎたり、落ち着けなかったりしたら、心身の健康を損なうことにもつながりかねません。持続可能な建築は、地球環境への配慮と同時に、そこで暮らす人々のウェルビーイング(心身ともに満たされた状態)の実現を目指しています。

    家は体を休める場所だから
    私たちの体は、普段意識していなくても、室内の環境から様々な影響を受けています。空気に含まれる物質、部屋の温度や湿度、照明の明るさ、聞こえてくる音など、目に見えない、あるいはあまり気に留めないような要素が、知らず知らずのうちに私たちの健康や心地よさに関わっています。だからこそ、家を建てる時やリフォームする時には、これらの室内環境についてしっかり考えることが大切なのです。
    空気がきれいなことの大切さ
    私たちが生きていく上で欠かせないのが「空気」です。外の空気はきれいにする努力が続けられていますが、実は建物の「室内」の空気も、私たちの健康に大きく関わっています。

    • 知らない間に潜む室内の化学物質
      現代の建物に使われている建材や家具の中には、接着剤や塗料などに微量の化学物質が含まれていることがあります。これらの化学物質が少しずつ空気中に放出されると、室内の空気を汚染し、「シックハウス症候群」の原因となることがあります。シックハウス症候群になると、目がチカチカしたり、喉が痛くなったり、頭痛や吐き気がしたりと、様々な体調不良が起こることがあります。特に小さな子供さんやアレルギー体質の方は影響を受けやすいと言われています。
    • 健康を守るための「換気」
      室内の空気をきれいに保つためには、「換気」が非常に重要です。窓を開けて外の新鮮な空気と入れ替えることも大切ですが、最近の気密性の高い建物では、計画的に換気を行うためのシステムが必要になります。法律でも、建物に適切な換気設備を設けることが定められています。換気をしっかり行うことで、室内の化学物質や二酸化炭素濃度を薄め、常にきれいな空気の中で過ごすことができるようになります。省エネルギーの観点からは、熱交換換気システムのように、排気する空気から熱だけを回収して給気する空気に移すことで、室温を大きく変えずに換気ができるシステムが効果的です。
    • 自然素材が空気を整える
      自然素材の中には、室内の空気をきれいに保つのに役立つ性質を持ったものがあります。例えば、漆喰や珪藻土といった壁材は、室内の湿度を調整するだけでなく、空気中の有害物質を吸着する効果があると言われています。また、無垢の木材には、空気中の湿度が高い時には湿気を吸収し、乾燥している時には湿気を放出する調湿作用があります。さらに、自然素材そのものから有害な化学物質が放出される心配が少ないため、健康的で安心な室内環境づくりに貢献します。
    • 湿度とカビ・ダニの関係
      室内の湿度が高すぎると、壁や窓に結露が発生しやすくなります。この結露を放置しておくと、カビが発生します。カビは見た目が悪いだけでなく、アレルギーや呼吸器系の疾患の原因となることがあります。また、カビが発生しやすい環境は、ダニにとっても住みやすい環境です。ダニもアレルギーの原因となります。適切な換気や除湿によって室内の湿度をコントロールし、結露を防ぐことは、カビやダニの発生を抑え、健康的な室内環境を保つために非常に大切です。自然素材の調湿効果も、この点に役立ちます。
    ちょうど良い「あたたかさ」と「涼しさ」
    快適な温度と湿度は、私たちの体調や気分に大きく影響します。暑すぎたり寒すぎたりする部屋では、ストレスを感じやすく、集中力も低下しがちです。

    • 温度差が体に与える影響
      冬場の寒い脱衣所から温かいお風呂場へ移動する際など、急激な温度変化は体に大きな負担をかけ、「ヒートショック」を引き起こす可能性があります。これは、血圧が急激に変動することで、心臓病や脳卒中につながることもある危険な現象です。家の中の場所ごとの温度差を小さくすることは、ヒートショックを防ぐ上で非常に重要です。
    • 断熱と気密が健康を守る
      省エネルギーの項目でも触れましたが、建物の断熱性と気密性を高めることは、健康面でも大きなメリットがあります。断熱材で建物をしっかり囲み、気密テープなどで隙間をなくすことで、外の寒さや暑さが室内に伝わりにくくなります。これにより、冬は家全体が暖かく、夏は涼しく保たれやすくなり、冷暖房に頼りすぎなくても快適に過ごせるようになります。また、家の中の温度ムラが少なくなり、ヒートショックのリスクを減らすことにもつながります。
    • 家の中の温度ムラをなくす
      断熱性能の高い家では、リビングだけでなく、廊下やトイレ、脱衣所といった場所も温度差が小さくなります。これにより、家の中のどこにいても快適に過ごせるようになります。温度ムラが少ないことは、高齢者の方や小さな子供さんがいる家庭では特に安心につながります。また、設定温度を極端に上げたり下げたりする必要がなくなるため、省エネにもつながります。
    光の力で心身を整える
    私たちが心身ともに健康でいるためには、「光」も重要な要素です。太陽の光は、私たちの気分や体のリズム(体内時計)に深く関わっています。

    • 自然の光を上手に取り入れる
      日中の活動時間帯に、明るい自然光を浴びることは、気分を明るくしたり、体のリズムを整えたりする効果があります。窓の配置や大きさを工夫して、部屋の中に自然光が十分に入るように設計することは、省エネだけでなく、心身の健康にも良い影響を与えます。明るい窓辺で過ごす時間は、心にゆとりをもたらしてくれます。
    • 照明計画で暮らしを豊かに
      夜間や日当たりの悪い場所では、照明が欠かせません。照明は単に部屋を明るくするだけでなく、空間の雰囲気を作り出し、私たちの目に与える影響も大きいです。部屋の用途に合わせて適切な明るさや色の照明を選び、眩しすぎたり暗すぎたりしないように配置を工夫することで、目の疲れを防ぎ、快適に過ごせるようになります。例えば、読書をする場所には手元をしっかり照らす照明、リラックスしたい場所には柔らかい光の間接照明といった使い分けです。
    静かで落ち着ける音環境
    私たちの周りには様々な音があふれています。車や電車の音、近所からの生活音など、不快な音はストレスの原因となり、集中力を妨げたり、睡眠を妨げたりすることがあります。建物は、こうした音から私たちを守る役割も担っています。

    • 外の音を気にせず過ごすために
      建物の遮音性を高めることで、外部からの騒音を軽減し、静かで落ち着ける室内環境を作ることができます。壁の構造を工夫したり、防音性の高い窓やドアを選んだりすることが有効です。幹線道路沿いなど、騒音レベルが高い場所に建物を建てる場合は、特に遮音対策が重要になります。
    • 家の中の音を心地よくする
      外部からの音だけでなく、家の中で発生する音も快適さに影響します。部屋の中での話し声や生活音が響きすぎないように、天井や壁に吸音効果のある材料を使ったり、適切な場所に家具を配置したりすることも、音環境を整える上で役立ちます。また、家族がそれぞれの活動を心地よく行えるように、部屋の配置や間取りを工夫することも大切です。
    健康で快適な空間がもたらすもの
    室内空気質、温湿度、光、音といった様々な要素に配慮して作られた空間は、私たちの心身の健康を守り、日々の暮らしの質を向上させます。病気のリスクを減らすだけでなく、ぐっすり眠れたり、集中して作業ができたり、家族と心地よく過ごせたりと、ポジティブな効果がたくさんあります。健康で快適な建物は、そこで暮らす人々の幸せな生活の基盤となります。持続可能な建築は、こうした人々の健康と快適さを最優先に考える視点を持っています。
  7. 地域の気候や文化との調和

    建物はその土地の気候や歴史、文化といった地域独自の環境の中に建てられます。
    その地域の特性を理解し、周囲の自然や街並みと調和するような建築は、美しい景観を作り出すだけでなく、環境負荷を減らすことにもつながることがあります。
    例えば、その土地で昔から使われている建材を利用したり、地域の気候に合わせて風通しや日差しを取り込む工夫をしたりすることです。
    地域の人々との交流が生まれるような、開かれた設計や、地域の伝統的な技術を活かすことも、その地域ならではの魅力を守り育むことにつながります。

    建物は、ただ地面の上に建てるものではありません。その土地の気候や風土、そしてそこで長い時間をかけて育まれてきた歴史や文化の中に建てられます。だからこそ、建物を建てる時には、その土地ならではの特性を理解し、周りの環境や人々の暮らしと調和することがとても大切になります。地域の気候や文化に寄り添った建築は、そこで暮らす人々にとって心地よいだけでなく、街並みを美しく保ち、地域独自の魅力を未来に伝えることにもつながります。

    その土地ならではの心地よさを見つける
    世界中どこでも同じような建物が建つのではなく、それぞれの地域に合った建物があるのは、その土地の気候や文化に合わせて工夫されてきたからです。北国の家と南国の家では、建て方も材料も大きく違います。これは、その土地の自然環境に逆らうのではなく、それに寄り添って快適に暮らすための知恵なのです。
    なぜ「その土地」に合わせることが大切なのでしょうか?
    建物を建てる土地の気候や文化に合わせることは、環境にも、そこで暮らす人々にも、そして地域全体にも良い影響を与えます。エネルギーを無駄なく使うこと、快適に過ごすこと、そして地域の景観やアイデンティティを守り育てることにつながるからです。
    地域の気候風土から生まれた建築の知恵
    日本は南北に長く、地域によって気候が大きく異なります。寒い冬に雪が多く降る地域もあれば、夏に非常に蒸し暑くなる地域もあります。昔から人々は、その土地の厳しい自然条件から身を守り、快適に暮らすために、様々な建築の工夫を凝らしてきました。

    • 寒い地域、暖かい地域、湿気の多い地域
      例えば、雪が多く降る地域では、屋根に雪が積もりにくいように傾斜をきつくしたり、雪下ろしがしやすい形状にしたりします。厳しい寒さに耐えるためには、壁や窓の断熱性能を高め、隙間風が入らないようにする工夫が重要です。一方、夏に高温多湿となる地域では、風通しを良くして湿気を逃がし、涼しく過ごせるように窓を大きくしたり、縁側を設けたりします。深い軒は、夏の強い日差しを遮る役割も果たします。
    • 昔の家に見る工夫
      日本の伝統的な民家には、その地域の気候風土に適した知恵がたくさん詰まっています。例えば、夏を快適に過ごすために、部屋と部屋の間を襖(ふすま)や障子で仕切り、全て開け放つことで風が通り抜けやすくする工夫があります。土壁は湿気を吸ったり吐いたりして部屋の湿度を調整する効果があります。また、高床式の建物は、地面からの湿気を避けたり、通風を良くしたりする役割を持っていました。これらの昔ながらの工夫は、現代の建築にも活かすことができます。
    • 現代の建物に活かす知恵
      昔の家で培われた気候風土への対応策は、現代の技術と組み合わせることでさらに効果を発揮します。例えば、高気密高断熱の技術で冬の寒さをシャットアウトしつつ、夏は自然の風を室内に取り込む窓の配置や通風計画を考えるといった、パッシブデザインの考え方です。地域の気候データに基づいて、日差しや風のシミュレーションを行い、最適な設計を行うことができます。
    • 地元の材料を使うこと
      その土地で古くから使われてきた建材は、その土地の気候になじみ、風合いも周囲の景色と調和しやすいものです。例えば、その地域の山で育った木材を使ったり、その土地で採れる石を使ったりすることです。地元の材料を使うことは、運搬にかかるエネルギーを減らせるだけでなく、地域の産業を支え、景観にもなじみやすいというメリットがあります。
    地域の歴史や文化を大切にする建築
    建物は、単なる箱ではなく、その地域の人々がどのように暮らし、どのような歴史を歩んできたのかを示す文化的な側面も持っています。地域の歴史や文化を尊重した建築は、街の個性を守り、人々の心のよりどころとなります。

    • 受け継がれてきた建物の形
      京都の町家や白川郷の合掌造りの家など、日本には地域ごとに特徴的な建築様式があります。これらの建物の形やデザインには、その地域の気候や暮らし方、そして人々の価値観が反映されています。新しい建物を建てる際にも、こうした地域の伝統的な建築様式からヒントを得たり、取り入れたりすることで、その地域らしい建物を生み出すことができます。
    • 街並みの「空気」を読む
      建物は一つだけでなく、たくさんの建物が集まって街並みを作ります。街並みには、建物の高さや壁の色、屋根の形、使われている材料などに、その地域ならではの雰囲気やルールのようなものがあります。新しい建物を建てる時には、周りの街並みと調和することを考えることも大切です。急に高層ビルが建ったり、周囲と全く違う色の建物が現れたりすると、街並みの調和が乱れてしまうことがあります。
    • 色や素材に込められた意味
      街並みを構成する建物の色や使われている素材も、その地域の歴史や文化を反映していることがあります。例えば、かつて栄えた産業に関連する素材を使っていたり、特定の色の組み合わせが好まれていたりといったことです。地域の文化的な背景を知り、建物のデザインに活かすことは、その地域への敬意を示すことにもつながります。
    • その土地らしい暮らし方
      地域には、祭りや年中行事、近所付き合いの習慣など、その土地ならではの暮らし方があります。こうした地域の文化に合わせた建物のあり方も考えられます。例えば、近所の人々が集まれるような共有スペースを設けたり、地域の行事を見やすいように建物の配置を工夫したりすることです。建物を建てることは、単に住む場所を作るだけでなく、その地域の暮らしの一部となることなのです。
    建物と街並みが織りなす風景
    一つ一つの建物が、周りの環境や他の建物と調和することで、美しい街並みや風景が生まれます。地域に根ざした建築は、こうした景観を守り、さらに魅力的にすることに貢献します。

    • 周りの景色に溶け込むデザイン
      山や海、川などの自然景観が豊かな場所では、建物のデザインを周囲の景色に溶け込ませることが求められます。例えば、建物の高さを抑えたり、自然の素材を使ったり、景観を遮らないような配置にしたりといった工夫です。建物が周囲の環境と調和することで、そこに暮らす人々も自然をより身近に感じられるようになります。
    • 高さと大きさを考える
      建物の高さやボリュームは、街並みの印象を大きく左右します。古い街並みが残る地域では、周囲の建物の高さに合わせた建物にすることで、昔ながらの雰囲気を守ることができます。また、建物の大きさが周囲のスケール感と合っていることも重要です。
    • 庭や外とのつながり
      建物は、壁で閉じるだけでなく、庭や外部空間とのつながりも大切です。庭に地域の植生に合った植物を植えたり、道路に面した部分を街並みに開いたりすることで、建物と周囲の環境がより一体となり、豊かな景観を作り出すことができます。
    地域の人々とのつながりを育む建築
    建物は、そこに住む人々だけでなく、地域の人々との交流の場となることもあります。建築の工夫によって、地域コミュニティの活性化につながる可能性もあります。

    • 開かれた空間を作る
      カフェやお店、集会所など、人々が集まる建物では、地域の人々が立ち寄りやすく、交流が生まれるような開かれた空間設計が求められます。例えば、通りに面した部分をガラス張りにしたり、誰もが気軽に利用できる広場のようなスペースを設けたりすることです。
    • 地元の職人さんとの連携
      建物を建てる際に、地元の工務店や職人さんに依頼することは、地域の技術や文化を継承することにつながります。また、地元の職人さんは、その土地の気候や材料の特性をよく知っているため、地域に合った、質の高い建物づくりが期待できます。人々のつながりの中で生まれる建物は、より地域に根ざしたものとなります。
    地域に根ざした建築がもたらす豊かさ
    地域の気候や文化との調和を考えた建築は、単に見た目が良いというだけでなく、エネルギーを無駄なく使い、そこで暮らす人々が快適に過ごせ、地域の文化や歴史を未来に伝えるという、多くの価値を持っています。その土地ならではの自然や人々の営みを感じながら暮らすことは、私たちの生活をより豊かにしてくれるはずです。持続可能な社会を目指す上で、それぞれの地域が持つ特性を大切にした建築のあり方が、今改めて見直されています。
私たちの暮らしを支える建物は、実は地球の環境と深く結びついています。家を建てるために地球の資源を使い、建物を使い続けるためにエネルギーを消費し、役目を終えた建物はゴミになる。この建物の「一生」を通じて、私たちは知らず知らずのうちに地球に負担をかけてきました。地球温暖化や資源の枯渇といった問題を考える時、建物のあり方を見直すことは避けて通れない課題となっています。

しかし、これは悲観的な話ばかりではありません。建物を建てる際の工夫や、日々の使い方を変えることで、地球への負担を大きく減らすことができるのです。そして、環境に優しい建築は、私たちの暮らしをより豊かで心地よいものにしてくれる可能性を秘めています。

まず、建物のエネルギー消費を減らすことは、環境負荷を低く抑える上で最も基本的なことです。壁や屋根にしっかり断熱材を入れること、窓の性能を高めること、隙間風を防ぐこと。これらは、冬の寒さや夏の暑さが室内に入ってくるのを防ぎ、冷暖房の使用を減らすことにつながります。少ないエネルギーで快適に過ごせる建物は、地球温暖化の原因となる二酸化炭素の排出量を減らすだけでなく、毎月の光熱費を抑えることにもつながります。

さらに、建物で使うエネルギーを、太陽の光や熱、地中の熱といった自然の恵みから作り出すことも可能です。太陽光発電で電気を作ったり、太陽熱でお湯を沸かしたりすることは、化石燃料への依存を減らし、エネルギーを自分で作り出す安心感をもたらしてくれます。省エネルギーと再生可能エネルギーを組み合わせることで、エネルギー消費量を実質ゼロに近づけることも夢ではなくなっています。

建物に使う材料を選ぶことも、環境への配慮につながります。木材や土、石といった自然素材は、適切に管理されたものであれば再生可能な資源であり、作る時にかかるエネルギーも少ないものが多いです。特に日本の森で育った国産材を使うことは、森林を健やかに保ち、地域の産業を支えることにもつながります。自然素材は、見た目の美しさだけでなく、室内の湿度を調整したり、体に優しい空気環境を作ったりと、私たちの健康や快適さにも良い影響を与えてくれます。

そして、一度建てた建物をできるだけ長く大切に使い続けるという考え方も非常に重要です。短期間で建て替えるのではなく、丈夫な構造で建て、定期的なメンテナンスを行い、必要に応じてリフォームやリノベーションで建物の性能やデザインを新しくしていくことで、建物を資源の無駄なく長く活用できます。これは、建物を単なる消耗品としてではなく、次世代に引き継ぐべき大切な資産として捉えることでもあります。長く住み続けることで建物への愛着も深まり、地域の歴史の一部ともなっていくでしょう。

建物の室内環境は、そこで暮らす人々の健康や毎日の快適さに直接影響します。空気がきれいに保たれているか、温度や湿度が適切か、自然の光が心地よく差し込むか、騒音が気にならないか。これらの要素に配慮して建物を作ることは、アレルギーや呼吸器系の問題を防いだり、ヒートショックのリスクを減らしたり、心身ともにリラックスして過ごせたりすることにつながります。省エネルギーな建物は、結果として人々の健康や快適さも守ってくれるのです。

さらに、建物を建てる土地の気候や風土、そしてそこで培われてきた歴史や文化に寄り添うことも、持続可能な建築の重要な側面です。地域の気候に適した伝統的な知恵を現代の技術と組み合わせたり、街並みの雰囲気に調和するデザインを取り入れたりすることは、エネルギーを効率的に使うことにつながるだけでなく、その地域ならではの美しい景観や豊かな文化を守り育てることにもなります。地域に根ざした建物は、そこに住む人々だけでなく、街全体の誇りとなり、地域の魅力を高めてくれます。

このように、「環境」と「建築」を両立させる持続可能な建築は、単なる技術論やルールに縛られることではありません。それは、地球の未来を考え、限りある資源を大切にし、そして何よりも、そこで暮らす私たちの心と体の健康と快適さを守り、地域社会とのつながりを大切にする、より人間的で豊かな暮らしを実現するための考え方なのです。建物を新しく建てる時、リフォームを考える時、あるいは今住んでいる家でできること。これらの視点を持つことが、持続可能な社会への一歩につながると信じています。私たちの選択一つ一つが、未来の地球と私たちの暮らしを作っていくのです。

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